好ましくないもの2点 <20190331 >

好ましくないもの2点.<自分の損得で動くような人間にはなるなと子供の頃から言われて育ち,そうありたいと思ってきた & きてているので> 国益を主張するのが当然の前提であるというような姿勢の報道.それに今日はとりわけ <少数者の存在を含む多様性を認めることが必要だという割には> 新元号期待論で溢れかえる報道.

今だからこその「地学のすすめ」:地球を知り,地球と付き合い,地球を楽しむ

北海道内のある自治体の市民向けの講座の講義を依頼され,昨日,広報用の資料のために講義のタイトルと概要を送った.ちょっと長いので削ることになるかもしれないので,ここに記録しておく.ちなみに講義をするのは夏になりそう.

 

講義タイトル

今だからこその「地学のすすめ」:地球を知り,地球と付き合い,地球を楽しむ

 

講義概要

最近,地震や火山の噴火,あるいは地すべりや土砂崩れなど,自然災害があちこちで発生し,皆さんも地球をこれまで以上に意識するようになってきたのではないでしょうか.自然災害は私たち人間にとってとても深刻なものですが,地球に悪気はありません.地球は人間の都合を忖度することなく,地球の理屈で生きているだけなのです.その地球の理屈を学ぶのが地学・地球科学なのですが,日本の学校教育の中での地学の存在は極めて小さく,ほとんどの国民は義務教育が終わってから地学に触れることがありません.

地学の目的は防災といった実利面だけではありません.地球という小さな惑星の上で生まれ,進化してきた生物種の一つ (の中の一人) として,「母なる地球」と「私たち」自身が「どこからきたのか,何者なのか,そしてどこへ行くのか」というある種,根源的なことを考えてみるのも人生の精神的豊かさの現れであると思います.この私が今ここに存在すること自体,46億年におよぶ地学現象の積み重ねの中の奇跡的偶然の結果であると考えてみると (大袈裟のようですが),実に不思議な感覚を覚えます.

NHKの番組「ブラタモリ」をみたことのある方はお解りでしょうが,身近なちょっとした地質・地形も,地球の営み,つまり地学現象の結果ですから,過去のことについて,いろんなことを教えてくれます.例えば,地層というものはほとんどが海の底にたまるものですから,裏山の崖に地層が見えるところはどこでも海であったことが解ります.それが解ったからと言って何も実利はありませんが,そうと解るだけでも,とても楽しい気持になれるのではないでしょうか.

災い転じて福となすといいますし,思い立ったが吉日ともいいます.この講義では上に書いたようなことをお話ししますが,皆さんが地学に親しみ,その結果として,地球と上手に付き合い,そのことで人生を豊かにされる,そのきっかけの一つになれば大変幸いです.

 

 

野外調査と安全

退職前に書いた謂わば「雑文」の類をひとつ見つけたので...

在職していた大学の「安全衛生委員会委員」というのをやっていた際に学生向けの広報誌に掲載されたものだと思う.ファイルの日付は2015/10/28であった.<よく見たら 2005/10/17 付であった>

安全豆知識:野外調査と安全

少なくてもかつては「北大は野外調査に強い」という評価のようなものがあった (or 今でもある?).入れ物である大学がどうのこうのというよりも,野外調査に強い感動を覚える人たち,好奇心にあふれ,探検や冒険に憧れる子供のような精神をもった沢山の人たちが北大にいたからだろう.僕が属する専攻の前身は地質学鉱物学科という名称で,やはりその典型のようなところであった.日高山脈など北海道内外の,どちらかというと調査自体に困難が伴うような場所の地質や岩石を精力的に研究する人たちが沢山いたし,ヒマラヤや南極・北極といった,これまた常人には近づき難い領域の地球科学的研究のパイオニアも多数出現した.学生諸君は見ていないと思うが,高倉 健が主演した映画「南極物語」にもその一端が出てくる.

野外調査・研究は大変である.野外だけで研究が完結することはなく,引き続いて実験室内で実験を行うことが普通なので費用も時間も余計にかかる.ところで,野外調査で危険に遭遇する確率は実験室で行われる研究の場合に比べて相当高いに違いない.もちろん,実験室内とは大いに異なり,野外の様々な条件を人間がコントロールすることは不可能だし,直ちに安全な「実験室の外」に避難することも難しいからだ.

野外での調査・研究は様々なアプローチのうちの1つに過ぎないから,別の方法を選ぶことも不可能ではないし,そのほうが賢いようにも見えることもある.しかし,例えば地球科学のように,それ抜きに健全な発展がありえない学問分野もあるから,完全に放棄するわけにはいかない.僕自身のことをいうと,学生時代には山岳部で山登りに明け暮れていたのだが,その特技をいかしたというわけでもないが,大学院以降は日高山脈北アルプスカラコルム山脈オマーン山脈などで調査を行ってきた.最近ではインド洋や大西洋の深海底掘削航海や潜航調査にも加わっている.

さて,野外調査の際の危険にどう対処するのか,あるいは事故が発生した場合にどう対処するのか,その制度的な方策は,現時点ではまだ十分に整備されていないようにみえる.例えば,北大全体に通用する,完全な野外調査用「安全の手引」は多分ない.

もちろん制度的方策の確立は当然である.しかし同時に野外で調査・研究をおこなう人たちの日常的な準備が不可欠であることはいうまでもない.その場合,多分最も重要なのは,何が危険なのかをきちんと知ることである.野外調査に限ったことではないが,危険に無知であることが事故の最大の原因となる.それに,都会での生活になれた人間にとっては野外にいること自体がストレスとなり,じっとしていても肉体的・精神的に消耗する.野外に存在する危険を知るとともに,野外の生活を楽しむことができるレベルに自分を近づける不断の努力と経験の蓄積が必要である.かるがると野外調査をこなす若い人たちがこれから先もこの大学に出現し続けるだろうと僕は思う.いろんな意味で野外調査は楽しくてexcitingであり,そしてそれは好奇心あふれる若い人たちが追い求めるものだからだ.

 

It's a breeze

[https://twitter.com/maedajin/status/1097375306837454848:embed#天気が良くて風も大変気持ち良いので,三角山へ.家から歩いて39分で山頂着.さらに大倉山山頂まで 17分.風は完全に春のそよ風なので, iPhone の音声入力で It's a breeze と言ったらちゃんと変換された.帰りにまた… https://t.co/qYzsOxFy

三角山